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651話

私がいる谷間は広大で、少なくとも一望の限りに広がっている。一望の限りといっても、本当に果てが見えないというわけではなく、谷の奥深くは光が届かず、非常に暗いため、どこに端があるのか全く見えないのだ。

十メートルほど歩いただけで、サラサラと流れる水の音が聞こえてきた。それに私は異常なほど興奮し、絶体絶命の状況から生き延びられるような感覚に包まれた。

私は駆け寄り、数メートル先に谷間を横切って流れる小川を見つけた。水源は澄み切っていて底まで見え、その中には手のひらサイズの魚が数匹、自由に泳ぎ回っていた。私はハハハと笑い声を上げた。水も魚もある、これで今日の夕食は確保できたというわけだ。

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