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234話

さらに三十分以上歩き続け、ようやく山の反対側に到着した。山腹の平らな場所に二軒の小屋があり、周囲には木々が植えられていて、いくぶん田園生活の趣があった。それが顔夢語の従兄が住んでいる場所だった。

私たちはそれほど時間を無駄にしたわけではないが、顔夢語の従兄の住まいに着いた時には、もう午後二時を過ぎていた。

「従兄は大学受験もせずに、ここに隠れ住んで田舎暮らしを始めちゃったの。どうして都会の生活を捨てる気になったのか、分からないわ」

顔夢語はそう言いながら私を小屋の前まで案内したが、扉が大きく開いているのに中には誰もいないことに気づいた。顔夢語は不思議そうな表情を浮かべた。「おかしいわね、...