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35話

人を探そうとしていた矢先、背後から見知らぬ声が聞こえてきた。

「おい、掃除のやつ、こっちこっち!」

自分に呼びかけられているとは思わないふりをしたが、心臓はバクバクと鳴り、万が一の時のために手にしたものをしっかりと握りしめた。足はわずかに震えていた。

くそ、こんなに運が悪いのか。まさか見つかったのか?

「お前だよ!掃除のやつ!」

その人はもう一度声をかけてきた。声には明らかにいらだちが滲んでいる。

私は何度も唾を飲み込んだ。知らないふりをして通り過ぎようかとも思ったが、怪しまれるのも怖かった。

もういい、死ぬなら死ぬ。何を聞かれても徹底的に否定するだけだ!

ぎこちなく体を回すと、話しかけてきた...