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182話

「これじゃないかね?」私はその男に尋ねた。

男は思いもよらなかったようだ。まさか私が本当に証拠を取り出すとは。彼はもともと少し疑っていた、この老人は自分を説得しに来たのだろうと。だが名刺を目にした瞬間、男は完全に警戒心を解いた。

生きているのは素晴らしいことだ。彼も本当は死にたいわけではなかった。ただ自分が騙され、一銭も残っていないことに心が痛み、生きる意味が見いだせなくなっていただけだ。

今、同じ境遇の人間を目の前にして、彼はまた生きる意欲を取り戻した。

「おじいさん、これはどこで手に入れたんですか?」男も自分のを取り出した。

二人の名刺は全く同じものだった。私は自分の経験を話した。もちろん...