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66話

叶来はタバコの箱から最後の一本を吸い終え、腕時計を見つめた。

一時間が経過したが、蘇馨月はまだ出てくる様子がなかった。

「まあ、何も問題はないだろう」

叶来から見れば、このバーはまだ上品な方で、出入りする客も高級志向の人々ばかりだった。

それに蘇馨月も普通の女性ではない。あの冷たく傲慢な社長オーラだけで、多くの男を遠ざけるのに十分だ。

どれほど興味を持っても、普通なら声をかける勇気など出ないだろう。

そこで叶来はさらに三十分待った後、もう躊躇することなく、大股でバーの中へと足を踏み入れた。

入口を通るとすぐに音楽が耳に飛び込み、酒の香りと香水の匂いが混じり合い、叶来は思わず眉をひそめた。

いわ...