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606話

大虎の顔にはのんびりした笑みが浮かんだままで、身をかわそうという動きは全くなかった。

場内の人々は、ほとんど全員が冷や汗を流していた。

五人のムエタイ使いによる一斉攻撃は、確かに衝撃的だった。

しかも、ムエタイは元々その凶暴さで知られており、全力で放たれた一蹴りの威力は当然弱いはずがない。

それでも大虎は依然として無反応だった。

その男の足が大虎の胸まであと十センチという距離まで迫った時、大虎の顔から突然あのんびりした笑みが消えた。

深く息を吸い込み、胸を前に突き出した。

「ドン!」

その一蹴りは確かに大虎の胸に命中した。

ムエタイ選手は大喜びした。

彼の異名は鉄脚無敵。

人間どころか、壁だっ...