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207話

ヒルがドアを押し開けた瞬間、人の心を惑わす甘い香りがドアの隙間から漏れてアイデンの鼻腔に忍び込んできた。

アイデンはヒルに頼んでいたオメガを見つけるのを長い間待っていた。もう脳が完全に混沌とし始め、我慢の限界に近づいていた時、ようやくヒルが連れてきた人が到着した。

しかも、あの甘く香ばしい匂いを纏って。

アイデンはどれほど長い間、オメガ特有の甘美な香りを嗅いでいなかったことか。今のこの状況では、本当に抵抗するのが難しかった。

アイデンは布団に包まったまま、ドアを開けた人を一気に引き込み、最後の一筋の意識で相手をベッドに押し倒した。

その後のことは、アイデンの記憶はあまり鮮明ではなかっ...