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89話

一行は雪海関でまず一泊休息を取ることにした。

贺闰は連日の偵察で心身ともに疲れ果てていたため、裴長淮は彼に十分な睡眠を取るよう命じ、夜には卫風臨が裴長淮の帥帳の外で見張りを務めることになった。

連日の移動で裴長淮自身も精神的に疲れていたため、この夜は深い眠りに落ち、恍惚と黄砂が舞い散る夢を見た。

いつも同じ悪夢が彼を苦しめる。地面には黒い鎧を着た死体が積み重なり、腥い風が吹き荒れ、武陵軍の引き裂かれた旗が風にはためいている……

裴長淮の前に一人の人物が立っていた。その人物は甲冑ではなく武袍を纏い、背中には無数の傷跡が刻まれ、手には銀槍を持ち、鮮血が赤い房飾りを伝って滴り落ちていた。

その人物が...