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84話

巫咸国の太尉は、かつては風流豪放で玉のように美しい若き公子であった。彼の家柄は平凡で、貴族の中では末流に過ぎなかった。

しかし、彼は際立った気品と驚くべき才能を持ち、当時まだ太子であった先帝の客人となることに成功した。

これを聞いて、南蘭は思わず顔をしかめた。まるで陳腐な展開の物語のようではないか。

おそらく門客が太子の妃を好きになり、その恋が引き裂かれて恨みを抱いたか。あるいは門客に婚約者がいたが、その女性が太子妃になってしまったとか…

そういった筋書きは結局のところ「別離」に尽きる。

世間で最も共感を呼ぶのは悲劇だ。どれほど明るい始まりでも、どれほど美しい展開があっても、悲劇で終...