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517話

唐龙は多くのことを考えていたが、今はそれを考える時間はなかった。というのも、巨大な牛の角が突き進んできたからだ。その角はすでに十メートル近くまで伸び、先端は光を放ち、まるで実物のようだった。

唐龙は軽やかに足を動かし、木の陰に身を隠した。しかしその牛の角は方向を変えることなく、木の幹に向かって真っ直ぐ突き刺さった。「ドーン」という音とともに、太ももほどの太さがある木の幹に穴が開き、木はぐらぐらと揺れ始めた。

唐龙は驚愕した。なんてこった、幻影で作り出されたものなのに、こんな威力を持つとは。どうやら油断はできないようだ。さもないと、この山中で名も知られぬ男の死体になってしまうところだった。

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