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499話

二人は談笑しながら、昆浩がテントに飛び込んだ。しばらくして、テントの入り口の隙間から見ると、方紫漠が上手に米を研いでいる姿が見えた。その姿は優しくも愛らしく、突然胸に後ろめたさが込み上げてきた。

だが、引いた弓に戻る矢はない。ましてや父の仇は同じ空の下では生きられぬほどのものだ。そんな男女の情など、それに比べれば何の価値もない。

昆浩は歯を食いしばり、テントのファスナーをしっかり閉め、自分の装備袋を開けた。その中の仕切りから四角い物体を取り出した。それは電話機だった。

この場所には通信信号がないが、それは一般の通信信号に限った話で、衛星電話なら地球上のどこからでも繋がる。

昆浩が手にし...