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431話

これは実に奇妙なことだ。犯人は証拠によって語るはずなのに、方仲海は一連の手配によって、彼を最も疑っていた唐龍に、心の中の大半の疑惑を打ち消させたのだ。

残された僅かな疑念は、長年特殊部隊の戦士として培った唐龍の本能から来るもので、方仲海のような人間は絶対に完全には信用できないという感覚だった。

そのとき、昆浩はグラスを持ち上げ、唐龍に向かって言った。「唐さん、一杯どうぞ。あの日のことのお詫びです」

他人からの酒は断れても、昆浩からの酒は必ず飲まなければならない。

理由は単純だ。彼は昆浩に借りがあるのだ。

昆麻子を殺したのは彼ではなかったが、人里離れた山林に昆麻子を連れて行き、一瞬の油...