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291話

唐龙が寧馨の家から出てきたのは、すでに夕方のことだった。空は薄暗く、暖かい風が吹いてくると、ただただ蒸し暑さを感じるばかりだった。

唐龙はポケットからガムを取り出し、包装を剥がして口に入れ、パクパクと噛み始めた。それだけでは物足りず、一本のタバコに火をつけ、アパートの脇にある細い小道をぶらぶらと歩いた。

さっき携帯を確認したところ、江淮から龍京への最終便は三時間前に飛び立っていたが、夜の八時に上海からまだ一便あることがわかった。今は五時半過ぎ、車で行けばまだ間に合うはずだ。

本来なら寧馨は唐龙に夕食を食べていってからにしろと誘ったのだが、唐龙は突然ある件を思い出した。江淮を離れる前に必ず...