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512話

陸国富は足音を忍ばせながら小紅の父親の側まで歩み寄り、彼を軽く揺さぶった。

「お前が陸国富か?」

翠のおやじは顔を上げ、なんと陸国富だと気づくと、心の中で驚きを隠せず、思わず声を上げてしまった!

「しっ!声を小さく!」

陸国富はハッとして、小紅の父の声が外の人に聞こえるのではないかと恐れた。

慌てて顔を上げて確認すると、幸い外からは何の物音も聞こえなかった。

老人も事態を理解し、すぐに口を閉じたが、その目には喜びが溢れていた。

陸国富が来てくれた以上、この忌まわしい場所からやっと脱出できる!

「歩けるか?」

陸国富は手早く小紅の父の縄を解きながら、小声で尋ねた。「これから排気管を伝って降りるん...