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278話

霧の谷で、葉然は空を見上げた。

月の光は朧げで、薄い絹のヴェールがかかったようだった。

風はますます強くなり、周囲の大木がざわざわと音を立てていた。

「山雨来たらんとするな」

葉然は独り言を漏らした。

「ええ、この雨、小さくはなさそうね」

アイナが相槌を打った。

葉然は籐椅子に腰掛けたまま、顔を上げ、人影一つない庭に向かって淡々と言った。

「来たのなら、出てきたらどうだ」

言葉が落ちるや否や、周囲に一瞬にして十数名の険しい表情の武者が現れ、葉然とアイナを取り囲んだ。

そして遠くでは、敖楚光と黒装束の武者が、赤外線望遠レンズでこちらの様子を監視していた。

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