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163話

「パパ、初寒お姉ちゃんにあげる花がなくなっちゃった」

晴儿は地面に踏みつけられてバラバラになったスミレを見て、今にも泣き出しそうな顔をしていた。

きれいかどうかは別として、これは初寒お姉ちゃんへのプレゼントだったのだ。

晴儿の記憶の中では、これが初めて初寒お姉ちゃんにプレゼントをあげる機会で、しかもパパと一緒に選んだものだった。

小さな女の子はスミレが踏み潰されたのを見て、心の中でとても悲しくなった。

娘が悲しむ様子を見て、葉然の胸の内に燃えていた怒りの炎が、ついに表に出てきた。

「晴儿、いいこだ。大丈夫、花がなくなっても、また買えばいいんだよ」

葉然は慰めるように...