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80話

暑さがじわじわと消え、気温が徐々に涼しくなってきた。

厨房には大量の上海蟹が新しく入荷し、捕れたての良品ばかり。手持ちの仕事を片付けるとすぐに厨房へ取りに行った。

蟹料理はバリエーション豊かで、辛口の蟹料理も酔蟹も絶品の美味しさだ。蟹味噌だけでも単独で調理できる。料理の腕さえあれば、十分の旨味を十二分に引き出せるのだ。

歩きながら調理法を心の中で考えていると、厨房のスタッフたちは私を見るなり丁寧に対応してくれた。竹籠を手に取ると、特に肥えた蟹ばかりを選んで一籠いっぱいに詰め、蓋をして、届けるのを手伝おうかと尋ねてきた。

人に頼るのは好きではないので、もちろん断った。さらに紹興酒を二本もらい、麻...