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16話

彼は指先に少量の軟膏を取り、それを指の腹で溶かしながら、かがみ込んで、私の赤くなった鼻先に慎重に塗りました。

距離が近く、お互いのまつ毛の震える様子までくっきりと見えました。

私は目を伏せ、視線は蘇延河の指に落ちていました。

この瞬間、私の心の中ではいろいろな思いが駆け巡っていました。

ここは五少の寝室、これ以上ない私的な空間です。

もし本気で抵抗して薬を塗ることを拒めば、彼はきっと無理強いはしないでしょう。

でも私が抵抗しなかったのは、蘇延河の中に何か違うものを見たからです。

澄んだ眼差し、穏やかな性格、私に向けられる視線のすべてが善意に満ちていました。

手首を握られた瞬間から考えていたので...