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648話

後ろの入り口に現れたのは、物腰の柔らかい少女だった。手に書類を持ち、秦朗が入ってくるのを見ると、すぐに駆け寄ってきた。

「秦さま、どうぞこちらへ。魯お嬢様がお待ちです。わたくし、社長室の秘書、俞晴と申します」

そう言いながら俞晴は、外を不安げに見つめた。まるで誰かに見られるのを恐れているかのようだった。

「俞秘書、どうしてそんなに慌てているんですか?外の状況で会社はそんなに焦っているんですか?」秦朗は尋ねながら、歩きつつ振り返って外を見た。怒号がまだ途切れることなく聞こえていた。

「最近、美辰グループはどうしてこんなに落ち着かないんだ?また何か問題でも起きたのかな?」秦朗は自分を部外者とは思っ...