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281話

おばあさんが病室に入ると、ドアが閉まった。彼女の視線はベッドに横たわる程猛へと向けられた。普段は素朴で正直そうな目が、今は狡猾な光を宿していた。

彼女は袖から使い捨ての注射器を取り出した。中には透明な、わずかに黄色みを帯びた液体が満たされていた。

これは中東から来た最高級の毒物で、現地の砂漠で捕獲された金環蛇の毒液から抽出された毒素だった。現在、世界中でこの毒素についての理解は「おぼろげなもの」と言える程度だった。さらに驚くべきことに、この毒素に侵された場合、最初の3日間は体内から成分を検出できず、3日後になってようやく中毒の諸症状が次々と現れるのだった。

おばあさんはその注射器を手に、...