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825話

「ない!」

考える間もなく、目を白黒させるマダムは即座に否定した。「若いの、ここは洋服店よ、調味料を売ってる店じゃ——あ、そういえば二階のキッチンにあったかも。ちょっと待っててね、見てくるわ」

記憶力の悪いマダムは、李南方が二枚の紙幣をテーブルに置いた途端、急に記憶が戻ったようだった。

小さな器と濡れティッシュを持ってきて欲しいと頼むと、「どういたしまして」と言葉遣いまで変わった。

お金には誰も勝てない。

紙幣を前にして、マダムも納得したようだ。あの人が彼女を年寄りっぽく、醜く見せたいというのは、それはそれで趣味なのだろう。「牛に真珠」現象に嫌悪感を示して、お金を逃す必要などない。

マダムが...