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686話

「そんなこと言わないでください。私にはそんな資格ありません。結構です」

李南方は二歩後ずさりし、淡々とした声で言った。「一度かぶった帽子は、この先ずっと君の前で脱げなくなるからね」

岳梓童が綿入れの上着を差し出そうとした動きが、宙でぎこちなく止まった。

彼女はようやく気づいた。なるほど、李南方が雨具のフードを被り続けていたのは、このフードが緑色だったからなのだ。

これは彼女に伝えているのだ。「君はすでに俺に緑の帽子をかぶせた。もう一生脱げないんだ」

ふざけんな!

以前の岳梓童なら、間違いなくこの言葉を鋭く叫び返していただろう。

だが今はできない。

昨晩、彼女が無意識にコンドームを握りしめて帰宅...