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642話

胡灭唐は去った。

世にも稀なる宝珠とも言える龍珠を手にして。

彼の出現も、立ち去りも、まるで隣のおっさんが何気なく訪ねてきて、家の三匹の番犬に吠えられた時、軽く蹴り飛ばすように過ぎ去っていった。

彼が振り返り、賀蘭小新の頬を引っ叩くぞと脅した時、彼女を見つめる目には、複雑な色が宿っていた。

惜しむ気持ち?

嫌悪感?

それとも——殺意!

胡老二のような自称正義の士という変わり者からすれば、悪事を働き尽くした者を目の前にしながら、即座にその命の花を散らせられないというのは、さぞ耐え難い苦痛だろう。

「ハハ、ハハハ」

銀の鈴のような澄んだ笑い声が、背中から冷や汗を流す賀蘭小新の耳元に響いた。

もち...