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625話

花夜神は贺兰扶苏のために用意していたスーツを、李南方に譲り渡した。手間を省くという理由もあったが、最も重要なのは、この機会に心の奥まで沁みた深い愛に別れを告げるためだった。

同時に、何年もの報われない恋に、ひとつの寄る辺を見つけるためでもあった。

簡単に言えば、李社長は彼女の「保険」として利用されていたのだ。

李南方は誰かの「保険」になることを特に嫌っていた。彼自身、女性には不自由していないし、しかも皆それぞれ優れた女性たちだった。これはまるで、千万長者が人の施しを受け入れるようなものだ。そんなことがあり得るだろうか?

だから彼は、足が蒸れて不快になっても、この安物のジャージを着続けることを選...