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598話

午後七時ちょうど、銀白色のハッチバック車がゆっくりとバーの前に停車した。

車の窓がゆるやかに下がり、中に座っている女性が、路端で星を眺めていた李南方に向かって手を振った。

福なら福、禍なら禍、避けられぬ運命なり。

李南方は心の中でこの十字の真経を唱えると、歯を食いしばって、ドアを開け、乗り込んだ。

車に乗り込むと、荊紅夫人の装いを見て、再び心の中で溜息をついた。

午後に彼女が部屋着姿だった時と比べると、より一層、より一層端正で上品だった。

淡い青色のオフショルダーイブニングドレスに身を包み、すらりとした白い首には白い真珠のネックレスが輝き、足元はやはり平底の布靴を履いていたが、これは運転用のも...