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589話

「虎穴に入らずんば、虎子を得ず」

陳魚児は軽く冷笑すると、椅子から立ち上がり、両手を背中で組んで、ゆっくりと窓辺へ歩み寄った。

彼女はまだ二十歳ほどの若さで、少し幼さの残る頬には明らかな稚気が漂っていた。それなのに両手を背中で組み、まるで大人ぶった態度をとっている姿は、彼女の素性を知らない人が見れば、気取った振る舞いに映るかもしれない。

しかし鼻炎の私服警官はそうは思わなかった。彼女の後ろ姿を見つめる目には、ただ敬意の色が浮かんでいた。

嶺南陳家の五小姐は、まさにこの気質を備えているべきだった。

作り出されたものではなく、母の胎内から出た瞬間から、彼女はこの風格を身につけていたのだ。

誰が想像...