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578話

「一度蛇に咬まれた者は、十年間井戸の縄を恐れる」ということわざがある。

展星神は幼い頃に蛇に噛まれ、毒に当たって命を落としかけたことがあった。しかし彼女が大人になっても恐れていたのは蛇ではなく——李南方だった。

彼女にとって、世界中の毒蛇を全て合わせても、李南方の恐ろしさの万分の一にも及ばなかった。

死ぬまで、三友ホテルの近くの谷間で受けた苦しみを忘れることはないだろう。

あの人は悪魔だ。

電話で話すどころか、真昼間に彼の名前を思い浮かべるだけで、展星神の心は震えてしまう。

彼女自身、李南方をそこまで恐れる必要がないことはわかっていた。

だが人間には二種類、コントロールできない感...