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480話

岳梓童が朝のランニングから戻ってくると、いつもならリビングのドアに着く頃には食事の香りが漂ってくるものだった。

しかし今朝はそれがなく、キッチンのドアは固く閉ざされ、中からは何の物音も聞こえなかった。

眉をひそめながら、庭で体操をしている小新姉さんに振り返って尋ねた。「あいつまだ起きてないの?それとも早々と出かけちゃったの?」

人というのはそういうものだ。

誰かが常に無償で尽くしてくれていても、それが一度途絶えると、すっかり当たり前と思っていた人間は、なぜいつものようにしてくれないのかと文句を言い出す。

「出てくるのは見てないわ。寝坊してるんじゃない?」

黒い練習着を着た賀蘭小新は、後ろ手で腰...