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256話

頭に英雄の光輪を戴き、著名人となって、どこへ行っても尊敬される。それは良いことだ。

だが、面倒でもある。

朝の七時半、岳社長はただ一般市民として守るべき交通規則に従い、交差点で赤信号が点灯したとき、停車して待っていると、勤務中の交通警官に認識されてしまった。

岳社長の愛車を認めた警官は、仕事も放り出して走り寄り、ピシッと敬礼をして、震える声で挨拶をした。

もし彼が飲酒運転の取り締まりに来たのなら、飲酒後の運転で一度も捕まったことのない岳社長は、きっと偉そうに車に座ったまま、ぞんざいに「何か用か」と尋ねただろう。

しかし、彼は挨拶をしに来たのだ。そして興奮した顔で恐縮しながら、取り...