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1985話

明珠外灘、風華会所。

この隠れた一流会所の高層階にある事務室で、二人のトレンチコート姿の男が頭を下げ、部屋の真ん中に恭しく立っていた。

豪華に装飾された執務机の後ろでは、五十代の中年男性が両足を机の上に乗せ、社長椅子に深く身を沈め、爪やすりを手に自分の爪を丹念に手入れしていた。

れっきとした男性であり、しかも五十を過ぎた中年のおじさんなのに。

彼の全身からは、どこか女性的な気配が漂っていた。

誰であれ彼の傍に立つと、何故か背筋が凍るような感覚に襲われるのだ。

さらに驚くべきことに、彼の鼻筋から下の顔半分は金箔の面で覆われており、素顔を窺い知ることは全くできなかった。

二人のトレンチコー...