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193話

「誰?誰なの、そんな力を持って、南方をこんな目に遭わせられるなんて?」師母の顔色が変わった。

薛星寒は何も言わず、頭を上げて北西の方を見つめた。

北西の方角には、また一つの大きな山がそびえ立っていた。植生が豊かで、八百村のある場所より数百メートルも高く、春夏秋冬を問わず、常に薄い白い霧に包まれている。四季折々の花が絶えないという伝説が、ここでは現実となっていた。

特に山の下にある帝王谷の中は、一年中春のような気候で、他の場所ではほぼ絶滅した梅花鹿や仙鹤などの珍しい動物たちが、ここを楽園としていた。

帝王谷の下には深い泉があり、それも温泉で、水質は甘く、谷内の植物を潤し、立ち上る湯気が白...