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1653話

李南方は去った。

限られた数人を除いて、彼がどこへ向かうのか誰も知らなかった。

ただ、一つだけ確かなことがあった。彼はまだ遠くへは行っていないということだ。

悲しみに暮れる岳梓童にはそんなことは思いつかなかったが、賀蘭小新には分かっていた。

新姉が岳梓童を抱きしめて慰めようとした時、偶然に服の内側にわずかな温もりを感じたことから気づいたのだ。

「梓童、もう泣かないで。南方はきっと誰かに連れ去られたの。出て行ってからそう時間は経ってないわ。今すぐ追いかければ取り戻せるかもしれない」

この賀蘭小新の一言が、すでに涙も枯れるほど悲しんでいた岳梓童の泣き声を突然止めた。

梨の花に雨滴がかかったよう...