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1527話

一番素早く反応したのは、李明都でもなければ、ましてや外の廊下で頭を抱えて壁際に立ち、傍観者を決め込んでいる藏龍山の護衛たちでもなかった。

瞬時に記憶を取り戻し、自分が誰なのかを思い出したのは李南方だった。

そう。

彼は李南方だ。

木子李、北から南へ飛ぶ雁の「李南方」。

高貴で、妖艶で、肌は白く、美しく、他人には冷酷だが彼にだけは優しい妻、花夜神がいる。

十一年前から彼をあの老人に殺されかけるほどの迷惑をかけ、大した実力もないのに自慢話ばかりで、横暴で理不尽だが、それでも心の全てを彼に捧げている叔母であり婚約者の岳梓童がいる。

そして彼にはまだ——多くの、本当に多くの彼を好きになり、愛...