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1312話

深まる夜の闇、真夜中が近づいていた。

そよ風が吹き渡るたび、気温は日中より十度以上も下がっていた。

だが、この気温は人間にとってはちょうど心地よいものだった。

特に雑草が生い茂る国境線に立ち、頭を上げて金三角方向を眺めると、耳元で断続的に鳴り響く虫の声が、都会では決して味わえない清々しさを感じさせてくれた。

上島桜花は知らなかった。彼女が今立っている場所に、数日前、岳梓童もまた立っていたことを。

あの夜、岳梓童に付き添って夜景を楽しみに来たのは王陽だった。

そして楊逍も。

今夜、上島桜花に付き添って来たのはガラだった。

楊逍——彼女は真夜中に異国の女と何かをぺちゃくちゃ話すために、ここまで来...