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1051話

舷梯を降りて夜空に浮かぶ三日月を見た瞬間、李南方は感慨深い気持ちになった。

詩の一節が頭をよぎる。「月は故郷に明るし」。

青山は彼を生み育てた故郷ではないが、李社長の恋愛や事業が託された場所であり、陳大力や董世雄などの腹心たちが、ある薄情な女性に苦しめられながら、彼の救済を待っていた。

だからこそ彼は青山を故郷と見なし、三日月に対して言葉にできない親近感を抱いていた。それは当然のことだった。

「ああ、俺、胡漢三が帰ってきたぞ」

その深い感情のこもった呼びかけがまだ耳に残っているうちに、空模様が一変した。三日月は黒雲に飲み込まれ、大豆よりも大きな雨粒が、ま...