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638話

「長き夜の、独り枕に眠れぬかな、はぁ」

閉ざされた部屋のドアを見つめ、趙然は諦めのため息をつくと、自分の部屋へと戻った。

夜中に目を覚ましたのは、膀胱の圧迫感のせいだった。

ここは農家民宿で、トイレは室内ではなく外にあった。

趙然は仕方なく服を着て、外のトイレへと向かった。

すっきりと用を足し、トイレのドアを開けて出ようとした瞬間、隣の女子トイレのドアも突然開いた。

趙然はその場で固まった。なぜなら、そこにいたのは他でもない、同じく尿意に駆られた鄭妍だったからだ。

薄手のネグリジェ一枚だけを纏った鄭妍を見て、彼の心が揺れた。

月も星も見えぬ夜、男女二人きりでトイレの前でばったり出会う。

こんな...