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588話

香りに誘われ、その光景を見つめながら、趙然は胸が熱くなった。わざと足を踏み外したかのように体を前に倒し、両手をそこに押し当てた。

その感触は、あまりにも弾力的だった。

突然の襲撃に、張婉は思わず可愛い声を上げた。

趙然は両手でしっかりと触れてから、名残惜しそうに手を引き、とぼけたように言った。「婉姉さん、すみません。今、つまずいてしまって。本当に悪気はなかったんです」

「あなた...まあ、いいわ」

恥ずかしそうな、申し訳なさそうな趙然の顔を見て、張婉は彼が故意だったのか、本当に偶然だったのか判断できなかった。

でも、さっきの熱い大きな手が触れたときの感覚が、彼女の胸を揺さぶっていた。

頬を赤ら...