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307話

「行動がしやすいように、趙然はわざわざ二つのキャップを買っておいたんだ」

帽子のつばは遮蔽効果が高く、その影の下では顔全体が暗く沈み、誰だか判別しづらくなる。

誘拐するわけではないが、尾行というからには、それなりにプロフェッショナルにやらなければならない。

「くそっ、見逃したんじゃないか?もう六時半だぞ!」

さらに三十分待っても人影が見えず、楊帆はいらいらし始めていた。そのとき、趙然がバックミラーに映る一組の男女を発見した。

「来たぞ、声を出すな」

趙然が注意を促すと、写真に写っていたあの太った男と、豊満な女性が横を通り過ぎていった。

二人はすぐに帽子を深くかぶり直した。

「く...