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812話

「もう!七時半に迎えに来るって約束してたのに!人の楽しみを邪魔して!」私は怒りを込めて電話に出た。

「人の楽しみ?え?」

向こうから聞こえる葉紫のよく知った声に、私はふと彼女の色っぽい赤い泣きぼくろを思い出した。

葉紫の喉から漏れる男の本能を刺激するような甘い声を聞いていると、私は思わず喉が渇いてくる。この女は体のどこもかしこも、男を手玉に取る武器になりうるのだ。

私は一度も疑ったことがない。初めて彼女に会った時、彼女は自分の体で私に忘れられない一課を教えてくれた。

魂を吸い取られそうな深いキスを思い出し、私は動揺を抑えながら言った。「もういいよ。何でもないから。電話してきたってこと...