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231話

「先輩、お礼なんて言わないでください。ここは私のバーですから、私はただ当然のことをしているだけです」艶姐は柔らかな声で言った。

私は艶姐を一瞥すると、目が輝いた。

「あの龍兄貴って一体何者なんだ?」

「あなた、今度は厄介なことになったわね。龍兄貴は地元のチンピラのボスよ。彼に喧嘩を売ったら、ろくなことにならないわ。この後は裏口から出た方がいいわよ」艶姐は言った。その口調にも諦めが滲んでいた。

艶姐の話から、私は龍兄貴の素性をおおよそ知ることができた。

龍兄貴はこの一帯の親分で、言うことを聞く子分が大勢いる。さっき私が見たのはほんの氷山の一角に過ぎず、もし龍兄貴が総力を挙げて出てきたら...