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1006話

葉紫は来るのも早かったが、去るのも早く、結局私一人だけが老人と向き合うことになった。

老人は哨所に座り、悠々とお茶を飲みながら、私の白杖を一瞥して、手招きで観光カートを呼び寄せると、運転手に言った。「この貴客を甌三姉のところまでお送りなさい!」

観光カートはゆっくりと揺られながら、小道をのんびりと進んでいく。途中、白鳥やシラサギが湖面で戯れる姿が見えた。住宅ローンを30年かけて払わなければならない呉松市に、こんな庭園付きの豪邸を建てられる金持ちがいるなんて、本当に想像を絶する。

「到着しました、どうぞ」

家庭教育がしっかりしているのだろう。甌家の門番も警備員も非常に丁寧で、権力を笠に着...