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96話

「拳」を連れて駐車場に着くと、彼は私が乗っているメルセデスSクラスを見て目を丸くした。

「メルセデスS400L、うわっ、この車一億五千万円くらいするんじゃないか?前乗ってたポルシェ・パナメーラと同じくらいだろ?」

「知らないよ」と私は運転席のドアを開けながら言った。「会社の車だから、自分のじゃないし、そんな細かいこと気にする必要ある?乗れよ、行くぞ」

「拳」は自分のスーツケースを抱えてトランクの方へ歩きながら不満そうに言った。「お前さぁ、誠意なさすぎだろ。このイケメンを太原から呼びつけておいて、空港から出たときも荷物持ってくれないし、車にも入れてくれないとか。お前、マジで俺をなめてんのか...