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52話

今回は完全に自分の出番はなく、卓嵌が一人で歌い、阿哲がスマホで動画撮影する中、僕はただの道具だった。卓嵌を抱きしめ、彼女の体の香りを嗅ぎながら、心に響く歌声に耳を傾けるだけ。一曲歌い終えると、卓嵌はさらに三曲目として周慧の「約束」を歌いたいと自ら申し出た。広場で歌うことは人を夢中にさせるのだと確信した。そこでは簡単に所謂「共感」を見つけられるのだろう。

終わった後、卓嵌と一緒に阿哲に別れを告げると、阿哲はまた小銭を握って渡そうとしたが、今回は本当に受け取らなかった。WiFiで今夜の動画を送ってくれればいいと伝えると、阿哲は全く問題ないと言って、帰ったらすぐ送ると約束してくれた。卓嵌は僕の腕を...