5話
「よし、悪役でも演じてやるか」と思い、真っ直ぐにソファへと歩み寄った。欣悦という名の少女はすでに顔面蒼白で、クッションを抱きしめながら警戒した目で私を見ていた。一方、録画していた方の少女はまだ冷静さを保ち、テーブルの上の「クリスタルの灰皿」を手に取り、私を指差して脅すように言った。
「近づかないで！警察を呼ぶわよ」
「消せ」私はテーブルの前に立ち、両手をジーンズのポケットに突っ込んだまま冷たく言った。「お前とやり合いたくはない」
「無駄よ」録画していた少女は誇らしげに顔を上げた。「動画はもうウェイボーに投稿済みよ。もう何百回も転送されてるわ。あんなに恥知らずなことをしておいて、人に知られるのを恐れるの？」
「くそっ」思わず小声で罵った。ウェイボーで何百回も転送された結果がどうなるか全く想像がつかない。憂鬱な気分で言った。「お前に何がわかる？傍観者なら黙って見てりゃいいだろ？なんで余計なことするんだ？転送して何の得があるんだ？」
「あなたに関係ないわ」録画していた少女は私を脅すように言った。「さっさと出て行って。出て行かないなら警察を呼ぶわよ」
本当に言葉が出なかった。自分の部屋に戻ろうと振り返ったが、まだ部屋のドアに着く前に、頭に鋭い痛みが走り、そのまま意識を失った。次に目を覚ました時、部屋には制服を着た二人が増えていて、私の両手は後ろで手錠をかけられ、床に伏せた状態だった。
「やるじゃないか、若いの」制服の男の一人が嘲るように言った。「女の子を妊娠させておいて検査費用すら出し惜しみして、さらに現場で録画した女の子を追いかけて家まで来るとはな。これが何の行為か分かってるのか？どれだけ大きな罪を犯したか分かってるのか？」
「ふざけんな」床に伏せたまま罵りかけたが、次の言葉を発する前に、もう一人が前に出て私の顔を蹴りつけた。
鼻がしびれるほど痛み、床には鮮血の水たまりができた。
昼間スマホで録画していた少女は今や何かのライブ配信プラットフォームで生放送しているようだった。彼女は解説しながら、昼間起きたこと、そして私が彼女たちを追いかけて家まで来て動画を消すよう強要したこと、そして彼女が私の隙を突いてガラスの灰皿で私を気絶させて警察を呼んだこと、警察が来て私を手錠で拘束し、冷水をかけて目を覚まさせ、連行しようとした時に私が抵抗したので警官がやむを得ず力づくで制圧したことを説明していた。
彼女はまるで実況中継のように生き生きと解説し、自撮り棒を持ってスマホを掲げ、二人の警官と一緒に写真を撮ろうとさえしていた。
私は床に伏せられたままで惨めな姿だったが、彼女はさらにクローズアップまで撮った。私は大声で叫んだ。「何の権利があって俺を捕まえるんだ？自分の家に帰っちゃいけないのか？」
「家だって？」配信していた少女は画面に向かって言った。「こんな嘘まで言うなんて！ここは明らかに私の家なのに、彼は自分の家だって言うの？誰が信じるっていうの？」
二人の制服姿の男は笑い、その一人が私を「慰め」るように言った。「若いの、嘘をつくならもっとマシな理由を考えろよ。おとなしく立ち上がって署まで来い。取り調べを受けるんだ」
「行かない」私は大声で叫んだ。「俺の部屋にはここの賃貸契約書がある。仲介業者を通してこのアパートを借りたんだ。鍵だってある。何の権利があって俺の家に来て逮捕するんだ？理由は何だ？さあ、お前ライブ好きなんだろ？ちゃんと配信してみろよ」
この時、制服の二人はすでに少し困惑していた。少女はさらに私を挑発するように尋ねた。「ここに住んでるって？賃貸契約書は？見せてみなさいよ」
「手を放せば俺の部屋にある」
「ダメ」欣悦という少女は明らかに私を恐れていて、制服の男たちに言った。「彼の部屋で契約書を探してもいいけど、彼は放さないで。怖いから」
二人は勝手に私の部屋に行くこともなく、私を解放することもせず、私を押さえつけたまま二番目の部屋に入った。配信していた少女はずっとスマホでフォローして生放送していた。私の部屋はとてもシンプルで、ベッド一つ、机一つ、そして壁に掛けられた木製ギター一つだけだった。警官は引き出しから私の賃貸契約書を見つけ、さらに私の財布から身分証明書を取り出した。これらすべてが少女によって配信されていた。彼女は本当に誤解だったことに気づくと、突然配信を終了した。
今度は二人の制服警官が呆然としていた。この誤解は少し大きくなりすぎていた。彼らは急いで私の手錠を外し、誠実に謝罪した。一人は自ら200元を取り出し、診療所に行って鼻の検査をするよう言い、もし怪我をしていたら責任を取ると言った。私も彼らを責める気はなかった。結局、この事件の元凶はあの少女だった。彼らは謝罪した後、立ち去った。私は寝室からリビングに戻ると、リビングには誰もいなかった。二人の少女は主寝室に戻っていて、私はかすかに主寝室から彼らのひそひそ話が聞こえた。
私は洗面所に行って汚れた服を脱ぎ、Tシャツの袖が裂けているのを見つけた。学校の門の前で38元で買った露店の商品だったが、それでも捨てるのは惜しかった。このTシャツは私が持っている3枚のうちの1枚で、1枚捨てれば1枚減る。身に付けているわずかなお金も食事のために取っておきたかったので、服を買う余裕はなかった。結局、服を水で洗い、ハンガーにかけると、裂け目がはっきりと見えた。
自分の寝室に戻って数分横になっていると、向かいの部屋のドアが開く音が聞こえた。彼女たちが私が寝ているかどうか話し合っているのが聞こえ、数秒後、欣悦が録画していた少女に早く出て行くよう、絶対に私を起こさないようにと言っているのが聞こえ、それからドアが閉まる音がした。よかった！これで静かになった。一人でゆっくり眠ることができる。
しばらくスマホをいじっていると、いくつかのWeChat（微信）グループが全て私と冉静の会話の動画を転送していた。確かに、動画の中の私は最悪だった。冉静のお腹を大きくしておきながら、再検査の費用すら出し渋る最低野郎だ。下のコメントはさらに反論のしようがなく、スマホを閉じた。その後どうやって眠ったのかも分からなかった。
翌日の午前中、まだ目を覚ましていないうちに、誰かが私の部屋のドアをノックする音がした。ビーチショーツを履いただけで自分のドアを開けた。動画を撮影した少女が私の部屋のドアの前に立ち、胸の前で腕を組み、正義感に満ちた様子で私に言った。「今日ここから出て行ってもらうわ」
「なぜ？」
彼女は横柄に言った。「クズ男と同じ屋根の下に住みたくないの。出て行って別の部屋を探して」
「俺だってお前みたいな神経質な女と同じ屋根の下に住みたくないよ。俺が気に入らないなら、お前が遠くに行けばいい」そう言って洗面所の方向に歩き始めた。
背後で、少女は私の腕をつかんで尋ねた。「どうしてそんなに厚かましいの？なんでこの家に居座るの？」
私は振り向いて彼女を振り払ったが、おそらく突然力が強すぎたのか、彼女はソファの近くに倒れてしまった。私は彼女を指差して怒鳴った。「誰が厚かましいって？同じように部屋を借りてるのに、なんで俺を追い出せるんだ？出て行くにしても先に来た方が優先だろ！それと警告しておくが、無駄に俺のドアをノックするな」そう言って、洗面所に入り、ドアを強く閉めた。洗面所から出てきたとき、彼女はリビングのソファに足を組んで座り、怒りの目で私を見つめていた。
その視線が不快で、私も睨み返して不機嫌に言った。「何見てんだ？こんなにカッコいい男見たことないのか？見続けるなら目ん玉引っこ抜くぞ」どうせもう最低男のレッテルを貼られてるんだ、彼女の目にさらに悪く映っても構わない。
予想外にも、彼女はソファに座ったまま笑い、私を見つめながら尋ねた。「カッコいい？どこからそんな自信が湧いてくるの？あなた…」
私は彼女に構う気が全くなかったので、彼女の言葉が終わる前に自分の部屋のドアを閉めた。私にとって午前中は必ず睡眠時間だ。さもないと睡眠不足になる。
ドアの外で、少女が脅すように言った。「あなたをこの部屋から追い出せなかったら、私は蘇羽氷じゃない」
彼女の名前は蘇羽氷というのか。ネット配信者か？ベッドに横になったが寝返りを打つばかりでもう眠れなかった。スマホを開くと、WeChatはまさに「爆発」と言えるほどで、様々なメッセージが押し寄せていた。
いくつかのグループで皆が私に言及し、動画の中の人物が私かどうか尋ねていた。
巴掌からの最初のメッセージ：「すげえな、マジで冉静とやったのか。今度は大変なことになったな？」
巴掌からの2番目のメッセージ：「冗談はさておき、何か助けが必要なら遠慮なく言ってくれ。電話は24時間オンにしてるから」
長い間連絡を取っていなかった夕顔からもメッセージが来た：「秋寒、一体どうなってるの？あなたがそんな人だとは信じられない」
少し迷った後、夕顔に返信した：「じゃあ、俺がどんな人間だと思う？」
すぐに夕顔から返事が来た：「動画の内容はかなり一方的だとわかってる。たとえ本当に彼女を妊娠させたとしても、あなたは責任から逃げる人じゃない。今大丈夫？ネット上の評判はあなたに不利だけど、気にしないで」
私は答えた：「まあまあかな。死にはしない。責任を取らないネットの暴徒たちだけだよ」
夕顔：「私はずっとあなたを親しい友達だと思ってる。もし何か手伝えることがあれば、よそ者扱いしないでね」
夕顔のメッセージを読み終えると、なぜか少し悔しい気持ちになった。なぜ悔しいのか自分でもわからなかった。
パソコンを開くと、作家グループでは喧嘩が起きていて、サイトの編集者が無力に何かを説明していた。多くの作家たちの追及に耐えかねて、編集者はついにグループを解散させた。サイトのホームページにログインしようとURLを入力すると、サイトは閉鎖されていた。知り合いの作家と話して初めて状況を知った。昨日が原稿料支払いの日だったのに、誰も受け取っておらず、サイトのオーナーが金を持ち逃げしたという噂があり、今日サイトが閉鎖され、QQグループも解散したのだ。結局、争う余地もなく、私の原稿料は受け取れず、私は失業した。
そして今、私の手元には200元ほどしかなく、アイミーに1000元以上の借金がある。これからどうやって生きていけばいいのか？
巴掌と同じように、ネットで履歴書を送ることにした。面接のチャンスを得られるかもしれない。どんな形でも、まずは自分の食べていく問題を解決しなければならない。結局、あと3ヶ月で大学を卒業するのだから、早めに仕事を探し始めても悪くはない。
その日のうちに10社に履歴書を送り、午後には3社から面接の電話がかかってきた。あの動画がなければ、私も朝9時から夕方5時までの仕事に就けたかもしれなかった。