3話
「実は、冉静がこの時点でここに現れるのは本当に適切ではないんだよな。彼女の質問にどう答えればいいんだろう？趙東は彼女の追い求める人の一人なんじゃないのか？今、俺と友達で趙東と『話し合い』に行こうとしてるのに、冉静はどう思うだろう？おそらく止めようとするんじゃないか？」
俺がまだ口を開く前に、巴掌が断固とした口調で冉静に言った。「余計な口を挟まないでくれよ。俺たちは趙東のところに行くんだ。お前が止めても無駄だからな」
「笑わせないで」冉静は目を転がして言った。「あなたたちが趙東を探すのに、私が邪魔する理由なんてないでしょ。四人とも学校に戻るの？」
「当たり前だろ」巴掌は四人が苦楽を共にする様子を見せながら言った。「俺たち四人は絶対一緒に行くさ」
「そう」冉静は一言答えて言った。「じゃあ、私も便乗して一緒に学校に戻るわ。秋寒はもう病院にいないし、私がここにいる必要もないから」
こうして、俺たち五人は病院を出た。陳冲はまだあのBMW5シリーズを運転していて、輝哥は助手席に座り、俺は後部座席の真ん中、左側には巴掌、右側には冉静が座った。俺を間に挟んで、巴掌は厚かましくも冉静をからかい、本当に俺のキスで気絶したのか？それとも口臭で気絶したのか？どうしてこんなに唐突に俺に優しくなったのか？と聞いてきた。
冉静は笑うだけで何も言わず、俺も巴掌に余計な心配はしないで、聞くべきでないことは聞くなと言った。
学校に戻ったのは午後4時頃で、車を女子寮の前に停めると、冉静が降りた後、俺たちは男子寮へと直行した。陳冲と輝哥が前を歩き、俺と巴掌がすぐ後ろについていった。陳冲は歩きながらジーンズからベルトを抜き取った。輝哥が最初に趙東の部屋に着くと、足を上げて閉まっていたドアを蹴り開けた。この一蹴りの力がどれほどのものだったか俺には推し量れないが、とにかくドアの鍵は完全に壊れた。
趙東はパンツ一枚で足を組んで座り、ちょうどゲームをしていた。ドアを蹴る音を聞いて、本能的に振り返った。輝哥がかがんでビール瓶を拾い上げ、その時には陳冲が最前列に立ち、ベルトを振り回して趙東の顔に打ちつけた。これが挨拶代わりだ。輝哥の手加減は陳冲よりもずっと荒く、手に持ったビール瓶を趙東の頭に叩きつけただけでなく、割れた瓶で彼の顔を突き刺した。
これは趙東を殺す勢いじゃないか。
部屋の他の数人はこの光景に恐れをなした。俺と巴掌が入った時には、趙東はすでに降参し、顔を押さえながら謝罪と哀願を繰り返していた。しかし陳冲はまだ彼を許す気配がなく、ベルトで趙東の裸の上半身を何度も打ちつけた。あっという間に彼の体には数条の鞭打ちの跡が残った。俺はもう十分だと思い、陳冲を引っ張って言った。「行こう、もういいだろ」
俺に引き止められて、陳冲はようやく手を止めた。巴掌はベッドの側に歩み寄り、一気に趙東の髪をつかんで尋ねた。「昨日、お前が秋寒に学校に現れるなと言ったって？現れたら一回殴るって？さあ、昨日のその横柄な態度をもう一度見せてみろよ」
「言って、言ってない」趙東はすっかり打ちのめされて降参していた。
「言ったかどうかなんてどうでもいい」巴掌は学校の門の方向を指差して言った。「今日からな、俺がお前を見かけたら一回殴る、わかったか？」
趙東はうなずいて承諾し、巴掌は出る時に平手で彼の頬を叩いた。
少し運動した後、陳冲は一緒に夕食でもと提案した。久しく会っていなかったし、もう卒業して学校を離れる時期だ。これからは全員揃う機会も少なくなるだろう。実は俺は陳冲と一緒に食事するのはあまり気が進まなかった。毎回食事をすると夕顔を見ることになるからだ。俺と夕顔は普通の友達のように会話はできるが、心の中ではどこか違和感があった。
巴掌はとんちんかんに承諾し、輝哥も異議なし。こうなると、俺も断るわけにはいかなかった。俺は寮に戻って服を着替えてくる、いつもの場所で会おうと言った。
言い終わると三人は先に行った。寮に戻って服を着替えるというのは口実で、本当に必要だったのは自分の心構えを整えることだった。俺は夕顔に自分の落胆した姿を見せたくなかった。俺たちは決して同じ世界の人間ではない。夕顔といると、プレッシャーがかなり大きかった。彼女は美しく、おっとりとしていて、毎日様々な暗示的なメッセージを受け取っている。別れた夜のことをはっきりと覚えている。俺と夕顔は学校のグラウンドで肩を並べて散歩していた。彼女は今日もまた誰かからバラの花を贈られたと、まるで自慢するような口調で言った。俺は無関心だった。何と言えばいいのかわからなかった。夕顔と付き合って約2年、バラの花どころか、バラの軟膏一つすら買ったことがなかった。
夕顔は俺の無関心さを見て不機嫌になり、本当にこういうことを気にしないのかと尋ねた。
俺は夕顔に、どうすればいいのかと聞いた。あなたに花を贈った男と決闘でもすればいいのか？主権を宣言すればいいのか？みんな20歳を過ぎた大人なのに、そんな幼稚なことをするわけにはいかないだろう？
すると夕顔は不機嫌になり、俺が彼女を気にかけていないと言い、お互いしばらく冷静になる時間が必要だと言った。
その時は夏休みまであと20日ほどだった。翌日、家から電話があり、祖母が危篤状態で急いで帰るよう言われた。夕顔に説明する時間もなく、急いで飛行機のチケットを買って内モンゴルに飛んだ。数日間、俺から夕顔に連絡することはなかった。祖母が亡くなった日、夕顔から電話があったが出られなかった。後に葬儀と出棺の日にも夕顔から電話があったが、やはり出られなかった。悲しみに浸っていた俺は夕顔に連絡を取らなかった。祖母の出棺の翌日、彼女からWeChatでメッセージが来て、正式な別れを告げられた。そしてそれで別れてしまった！再会した時には彼女が陳冲と一緒にいるのを見た。目が合った時、俺たちは沈黙を選んだ。
寮で冷水シャワーを浴びた後、俺は冉静の電話番号を見つけて電話をかけた。冉静の明るい声が電話の向こうから聞こえてきた。「終わった？」
「うん」俺は一言答え、からかうような口調で尋ねた。「長い夜、お嬢さんは眠れないのではないかな？この若者、お嬢さんを夕食にお誘いしたいのだが、いかがだろうか？」
「ふん」冉静は笑って言った。「どこが長い夜よ。でも夕食はいいわね」
「OK」俺は冉静に言った。「今から女子寮の下で待ってるよ。友達も一緒だけど、大丈夫？」
「構わないわ。下で待っていて、すぐに行くから」
俺と冉静がレストランに着いた時、料理はすでに次々と運ばれてきていた。夕顔と陳冲が俺たちの向かいに座っていた。個室に入ると、冉静は堂々と他の人たちに挨拶した。俺はちょっと見栄を張って、冉静の腰に手を回し、夕顔を見ながらこれが俺の彼女だと言った。これは完全に心の弱さからの自慢だった。夕顔は一言答え、進んで冉静と握手した。
最も喜んでいたのは陳冲だろう。俺と夕顔が別れた後ずっと一人だったので、彼はどこか罪悪感を持っていた。今、俺に新しい彼女ができたのを見て、彼は自然とかなり楽になった。食事の後にバーに行こうと提案した。バーではサイコロゲームや飲酒が避けられない。最初にトイレに行った時、陳冲が一緒についてきた。洗面所で彼は俺に冉静をこうやって手に入れたのかと聞いた。俺はまだ始まったばかりだと答えた。
陳冲は今夜必ず冉静を酔わせて、俺に既成事実を作るチャンスをくれると言った。小便から戻ると、彼は本当にそうした。巴掌も陳冲の意図を見抜き、二人は力を合わせて冉静をいじめ始めた。冉静は俺に助けを求めた。
しばらくすると我慢できなくなり、二度目にトイレに駆け込んだ。出てきた時、夕顔が外に立っているのを見た。俺はまだ見なかったふりをして、頭を下げて夕顔の横を通り過ぎようとした。夕顔は俺の行く手を阻み、見つめながら尋ねた。「秋寒、どうして冉静と一緒にいるの？」
その時俺は少し酔っていて、すぐに不機嫌になった。眉をひそめて尋ねた。「何なんだよ？お前は俺と別れたのに、俺が他の彼女を見つけるのを許さないのか？お前だって陳冲のベッドで寝てるじゃないか」
一言で夕顔も怒らせてしまった。彼女の目は赤くなり、涙が目に溜まっていた。俺に言った。「あなたはばかね。こんな女に騙されても、まだお金を数えてあげるつもりなの」
俺は不機嫌に言った。「俺の勝手だろ、お前に何の関係があるんだ？」言い終わると、夕顔の体を押しのけて、ボックス席の方へ歩いていった。
冉静はまだ陳冲とサイコロゲームをしていた。俺は輝哥と巴掌を誘って一緒に遊んだ。その日はたくさん酒を飲み、後でどうやってバーを出たのかさえわからなかった。数時間後、ようやく少し意識が戻ってきた。かすかな清らかな香りがほのかに漂っていた。
ゆっくりと目を開けると、ここは俺のよく知る寮ではないことに気づいた。突然、冉静が俺の横にいることに気づいた。最初の直感は、これは現実ではなく、絶対に夢に違いないということだった。真偽を確かめるために、自分自身をきつく摘んでみた——痛い。
記憶が飛ぶほど酔った結果、誰かに寝取られても気づかないということだ。俺は冉静の顔を真剣に見つめた。みんなが密かに恋していた女神がこうして俺のベッドに横たわっているなんて？恐る恐る手を冉静の腰に置くと、彼女はゆっくりと目を開けた。俺たちは数秒間見つめ合い、冉静は頭を俺の胸に寄せて、小さな声で言った。「寒いわ、もっと抱きしめて」
俺は冉静をしっかりと抱きしめた。彼女の息は湿り気を帯び、俺の耳元に吹きかけられた。彼女は積極的に俺の耳たぶを噛み、俺の手は彼女の体の上を這い回った。暗闇の中で、俺たちはお互いを求め合い、後先考えずに狂ったように体力を使い果たし、疲れ果てて抱き合ったまま眠りについた。
あの夜は夢のようだった。なぜなら翌朝目が覚めると、冉静の姿はなかったからだ。俺は自分の携帯を取り出して冉静に電話をかけた。優しい女性の声がこう告げた。「お客様のおかけになった電話の電源は切れています」
WeChatを送っても返事はなかった。俺はこうして女神を失ってしまったのか？
起床して部屋を出ると、ホテルのフロントは132元のデポジットを返してくれた。明細には一晩368元と書かれていて、このお金はすべて冉静が払ったものだった。以前、俺が夕顔とホテルに行った時は、たかだか100元ちょっとの漢庭ホテルだった。冉静は本当に贅沢だ。
寮に戻ると、巴掌は荷物をまとめていた。俺は巴掌に何をしているのか聞いた。早めに卒業するつもりか？
巴掌は今朝ある会社の面接に行って、すでに通過したと言った。会社は宿泊施設を提供してくれるので、彼は早めに出て行くつもりだった。突然、ここにはもうすぐ俺一人だけが残ることに気づき、心は惆悵に満ちた。俺は巴掌に言った。「今夜お前が出て行ったら、俺は一人でもう眠れなくなるかもしれない。人が去って空っぽになった感覚が、俺を極度の悲しみに沈ませるだろう」
巴掌は手を止め、俺にタバコを一本投げ、寂しげに言った。「いつかはこういう日が来る。ここはもう俺たちのものではなくなる」
俺も黙って自分の持ち物を整理し始めた。俺が持って帰れるものは何だろう？ノートパソコン一台、ギター一本、残りの衣類はスーツケース一つで運べる。大学3年間の最後の記憶がこれだけだなんて。
俺は巴掌に一緒に昼食を食べようと言った。お前が出て行ったら、俺ももう学校には住まない。外で部屋を借りて、早めに社会に適応しようと。
こうして、二人の別れの食事は学校の食堂で済ませた。食事の後、俺は巴掌を見送った。冉静に電話をかけて話したいと思ったが、電話はまだ電源が切れたままだった。もう昼なのに、彼女はわざとなのか？