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118話

道中は静かだった。私は自分の能力が許す限りの最高速度で二環を北市区の長蟲山の麓まで疾走した。紅雲路の交差点の真向かいに、車で山に登れる道がある。最初は土の道だが、山の中腹に差し掛かると整備された舗装道路に変わる。長蟲山には多くの土葬の墓があり、蛇も多い。蛇の別名は「長蟲」で、これが長蟲山の名前の由来だ。

車で山を登ること約三十分、途中で山から降りてくる二台の車とすれ違った。すれ違うたびに卓蘭のポルシェではないかと注意深く見ていたが、道中では会えなかった。展望亭の傍らに卓蘭の車を発見した。

私は自分のベンツをポルシェの後ろに停め、エンジンを切ってからポルシェの窓に顔を寄せて中を覗いた。運転席...