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89話

「定時になりました。上司が急いで駆け寄って来て、『小斉くん、今夜食事会があるんだけど、何度もタクシーを呼んでも誰も来てくれなくて。送ってくれない?』と尋ねてきました。

「どちらへ行かれるんですか?」

「***」

聞いた住所は自宅と反対方向で、往復すると2時間半ほどかかる。少し躊躇してしまった。

上司は私の難色を見て、眉をひそめて立ち去った。

罪悪感を感じた私は急いで追いかけた。「あの、田部長、運転できますか?」

田部長は不満げな表情を浮かべながらも答えた。「できるよ。ただ、まだ車を買ってないだけで」

「では私の車で行かれてはどうですか。そうすれば時間も無駄にならないですし」

上司はそれを聞いて...