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655話

「あの、ちょっと手を洗いたいんだけど...」と澄澄は言いかけたが、外に出てから五秒と経たないうちに戻ってきて、怯えた表情で私に訴えた。「トイレすごく遠いし、真っ暗で誰もいないの。亮お兄ちゃん、一緒に来てくれない?」

クラブからトイレまでは長い廊下を通らなければならない。この大型商業施設はクラブ以外営業していないため、途中に照明はあるものの少なく、確かに人気のない雰囲気は少し怖い感じがする。

長い廊下の突き当たりに着くと、女子トイレの前には「清掃中」の看板が立てられていた。澄澄は困った顔をしている。私は小声で言った。「こんな遅くにここに人もほとんどいないのに、掃除なんてしてるわけないよ。たぶ...