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1070話

「あっ!」...安二虎は本能的に彼女に駆け寄り、抱きしめた。

「莫蘭、怖がるな。俺がいるから!」そう言った途端、エレベーターがまた突然停止した。空中に宙づりになったまま、安二虎は彼女を抱きながらエレベーターのボタンを押し続けたが、まったく反応がない。それから外部に電話をかけようとして、携帯を落としてしまったことに気づいた。中は光が一切なく、真っ暗で、物音ひとつしない。二人の呼吸音がはっきりと聞こえるほどだ。確実に、今のエレベーターの位置は出入り口には合っていない。

「二虎兄さん、私たち、ここで死んじゃうのかな?」莫蘭は取り乱したまま、彼の耳元でそう言った。

莫蘭から漂う香りを嗅ぎながら、...