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770話

テレビはついていたが、趙天明と李菲菲は番組の内容に気を留める余裕がなかった。

食器を洗い終えた李菲菲は、キッチンをもう一度掃除してから、エプロンを脱ぎ、趙天明の隣に腰を下ろした。リビングのソファは狭く、李菲菲は趙天明にぴったりくっついて座るしかなかった。

趙天明は李菲菲から、普段なら必ず感じ取れるはずの香りを嗅ぎ取ることができなかった。しかし、かすかな汗の匂いとシャンプーの香りが、なぜか趙天明をより一層落ち着かなくさせた。

「ねえ、もうすぐ9時だし、そろそろ——」

「お父さん、そんなに早く寝かせたいの?」李菲菲はテレビを見たまま、静かな口調でそう言った。

李菲菲の気持ちの変化に趙天明...